2013/03/15

「エラーは開成の伝統ですから」 高橋秀実「「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー」


アヒオ「ブログを見ているみんな!こんにちは!

今、野球の国際大会であるWBCが開催中で、日本は苦戦しながら第2ラウンドを勝ち進み、来週の月曜日にいよいよ準決勝だね!

というわけで、今日はめずらしく野球に関係のある本の紹介だ。

高橋秀実 の「「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー」という本だよ。



アヒコ「開成高校野球部ってことは、高校野球の話ね」

ガチョオ「オレは高校野球のことはあんまりようわからんねんけど、開成高校ってそんなに有名な高校なんか?

アヒオ「うん。関西ではそこまで知名度はないかもしれないけれど、とても有名な私立高校だよ。ただし、野球ではなくて勉強でね。

毎年200人近くが東京大学に合格するという日本一の進学校なんだ」

ガチョオ「そんな学校か!灘みたいなもんやな

アヒオ「まあね。

でも、そんな超進学校の開成高校野球部が、平成十七年に東東京予選でなんとベスト16まで勝ち進んだんだ」

ガチョオ「なんでそんな学校がそこまでいけたんや?

たまたま一人、天才みたいなエースで四番の選手がいたんか?高校野球やったらそれである程度はなんとかなるもんな。

それとも頭のええやつらばっかりやから、データを生かした頭脳プレイで勝ち進んだんやろうか?」

アヒコ「きっとそっちよ!

漫画とかでも敵としてよくでてくるじゃない?コンピューターを駆使した天才集団みたいなライバルが。きっとあれよ。

前もって相手のクセとか、弱点とかを研究、分析して、全部頭に入れて、相手のパターンを予測して実力不足を補ったんじゃないかしら?

アヒオ「と、そう思うよね。普通。人間の想像力なんてしょせんそんなもんだ。

マンガやゲームなどのフィクションでは、そういう「頭はいいけれど運動神経が悪い選手ばかりのチームが、得意の頭脳プレイで戦う」っていうのが、ある種お決まりのパターンだ。

ところが、現実はまったくそうではないんだ。もちろん、「実は開成高校の生徒は頭がいいだけでなくて運動神経も抜群のスーパーマン」なんていうオチでもない。ほとんどの部員は超運動音痴だ。

この本は、そんな開成野球部が奇跡的に勝てている不思議さに著者が興味を持って取材したルポタージュなんだ」

ガチョオ「それじゃあ、どうやって勝つねん?

まさか女子マネージャーが試合前に敵チームのエースを誘惑して骨抜きにするとかじゃあないやろうな?」

アヒコ「ガチョオ君、それ、別の本だから・・・。

(過去記事)
「もし、ドラッガーを読んでも勝てないと悟った女子マネージャーが肉体を駆使したら… 」



アヒオ「もちろん、そんなわけないよ。なにしろ開成高校は男子校だしね。

それじゃあ、どうやって勝ったかの前に、開成高校野球部がどれぐらい弱いかを先に紹介するね。

まず、練習時間だけど、グラウンドが一つのため、他の部活との兼ね合いで硬式野球部が練習できるのは週一回、それも3時間ほどの練習だけなんだ」

ガチョオ「それで負けた相手チームがかわいそうになってくるな・・・」

アヒオ「しかも、部員は基本的に下手だ。それも半端無く下手なんだ。

ゴロはトンネル、フライは落とす、キャッチボールですらエラーするレベルなんだ。もちろん、軟式野球部あがりのような「下手ではない」選手もいることはいるんだけれど、基本下手なんだ。

(引用)

「エラーは開成の伝統ですから」
(中略)
「僕たちのようにエラーしまくると、相手は相当油断しますよね。油断を誘うみたいなところもあるんです」
エラーは戦略の一環らしいのである。

(引用終わり)

だから選手のポジションも「向き不向き」では決めないんだ。なにしろ「向き不向き」でいうと全員野球に不向きだからね。

で、選手のポジションを決める基準が


  • ピッチャー 投げ方が安定している
  • 内野手 そこそこ投げ方が安定している
  • 外野手 それ以外

という風になっているんだ。

これはなぜかというと、ピッチャーがストライクゾーンにボールを投げられないと、試合が成立しないという勝負以前のマナーの問題なんだって」

アヒコ「・・・。それ、どうやって勝つのよ?」

ガチョオ「この本、コメディ小説とかと違うよな?

なんか聞いてるとまぐれでも勝たれへんレベルやぞ。ベスト16なんていったいどんな手をつかってん!?」

アヒオ「だからルポタージュっていってるじゃないか。全部実話だよ。

それじゃあどうやって勝ったのか。その答えは「ドサクサ打線」にあったんだ」

ガチョオ「ドサクサ打線?」

アヒオ「そう。勢いをつくって相手を飲み込む。振り遅れてもいいから、どんどん振る

具体的には、二番に最も打てる強打者を置いて、その次に打てる選手を一番打者、あとは順番に打てそうな選手を並べるんだ」

アヒコ「なんで二番打者に一番打てる選手を?」

アヒオ「打線って必ずしも毎回一番から始まるわけではないだろ?

例えばあるイニングで、8番や9番がまぐれでもいいからヒットやフォアボールで出塁するとする。すると相手は「下位打線に打たれた」とうろたえるので、そこがチャンスだ。間髪入れずに1番からのクリーンナップで勢いをつけて大量点を取る。

そうやって激しいパンチを喰らわせて大量点を奪うイニングをつくって、そのままドサクサに紛れて勝ってしまうんだ。

いうなれば、ハイリスク・ハイリターンのギャンブルだ。

ギャンブルを仕掛けなければ勝つ確率は0%だけど、ギャンブルを仕掛ければ活路は見いだせる、という考え方だね」

ガチョオ「そんなんでうまくいくことあるんかいな・・・、と思うけれど、あるから、ちゃんと勝ててるんやな・・・。

それにしても大味な野球やな」

アヒオ「そうだね。なにしろ開成の野球にはサインプレイがないぐらいだからね。

(引用)

「サインを出して、そのとおりに動くというのは練習が必要です。ウチはそんな練習やらせてあげる時間もないし、選手たちも器用じゃありませんから。バントしろと指示したってそもそもバントできないですからね。それに、サインを見るというのは一種の習慣でして、ウチの選手たちは見る習慣がないから、出しても見落とすんですよ」

(引用終わり)

だから、打線が爆発するかしないか、一発勝負だ。」

アヒコ「冗談にしか見えないけれど、それでまがりなりにも結果が出ているんだから、開成の事情を考えると、そのやり方は理にかなっているっていうことなのよね・・・」

アヒオ「それに、超進学校だけあって、部員たちがみんな、違った意味で「頭で野球をしていて」とてもユニークで面白いんだ。そんな野球部員たちの独自の野球観に触れられるのもこの本の読みどころだよ。

例えばね

(引用)

「大体、僕らみたいに運動神経がない人間は、他の競技だったら、その運動神経の無さがモロに出て、やりようがなかったと思うんです。でも野球は違う。野球は運動神経がないならないなりにやりようがある。投げ方にしても打ち方にしても、ちゃんと考えることでできるようになる。哲学してるみたいで楽しいんです」

(引用終わり)

ね。楽しそうだろ?」

アヒコ「た、確かにユニークね」

ガチョオ「なんか、野球部とか、高校野球のイメージが根本から変わるな」

アヒオ「そうそう。この開成高校の野球部にはガチョオ君の言うように、いわゆる「熱血」、「根性」、「丸刈り」、「精神論」、「監督の理不尽なやり方に絶対服従」、「体罰」、「連帯責任」、「後輩いじめ」、みたいな日本の高校野球に特有のネガティブイメージが全くないんだよね。だから笑えながらもさわやかで、清々しい読後感だったよ」

ガチョオ「オレはそこまで言ってないぞ」

アヒコ「アヒオくん、高校野球になにか恨みでもあるの?」

アヒオ「そんなわけないじゃないか!気のせいだよ。気のせい

アヒコ「・・・」

アヒオ「ともあれ、とにかく読めば野球に対する「常識」が一変する、楽しいルポタージュだから、ぜひみんな読んでほしいな。

特に運動音痴で体育が嫌いだった人や体育会系の雰囲気が苦手だった人にはオススメだ。

スポーツは運動神経がいいやつだけの特権ではなくて、本当はだれがやってもいいし、楽しいものなんだなって思えるよ」

三羽「それじゃあみんな、またね〜」


To Be Continued...


(参考過去記事)
「もし、ドラッガーを読んでも勝てないと悟った女子マネージャーが肉体を駆使したら… 」


<キャスト>

アヒオ・・・アヒル系男子。好きなチームはセレッソ大阪。最近のお気に入りはイナバのタイカレー缶(イエロー)。今年の目標は紅楼夢読破。


アヒコ・・・アヒル系女子。真面目で好奇心旺盛な女の子。好きなスイーツは牛乳プリン。現在、ダイエットに挑戦中。


ガチョオ・・・ガチョウ系男子。好きなチームはJ2のガンバ大阪。

白鳥(しらとり)先生・・・スワン系アラサー女子。カモ文化学園の教師。独身。学園のマドンナ的存在で、密かに思いを寄せる男子生徒多数。好きな話題はシモネタ。好きな牛丼系チェーン店は松屋。


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